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トピックス――国際事情・アメリカ事情
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目 次 《2008年11月》
《2008年10月》
《2008年9月》
《2008年8月》
《2008年7月》
《2008年11月》
アメリカの大統領選挙の結果、民主党のバラク・オバマ氏が共和党のジョン・マケイン氏を大差で破り、見事当選した。アメリカ史上初の黒人大統領の誕生となる見込みであり、また、クリントン大統領以来8年ぶりの民主党の政権奪回となる。人種の壁を越えて白人男女からも半数近い投票があった。オバマ氏の勝因は約6億ドルもの資金を投資した選挙活動や、変革(チェンジ)・統一(ユニティ)を掲げた彼の演説の影響が大きいと考えられる。 1月からオバマ政権は始まるのであるが、多くの課題に取り組んでいかなければならない。その中でも最も重要と目されるのは、金融危機・経済不況への対策である。早急な対策が求められる中で、オバマ氏は、低中所得層への減税、公共事業などの政策を打ち出そうとしている。具体的には道路などのインフラ整備に公共投資を行うことや、経営の悪化が懸念されている大手自動車メーカー(ゼネラルモーターズ・フォードモーター・クライスラー)への支援を行おうとしている。オバマ氏は「外国企業との競争や米景気縮小で打撃を受けている自動車メーカーを、米国は見捨てることはできない。米政府は融資保証でメーカー各社を安定させる手助けができるかもしれない」と述べ、これが金融危機からの脱却につながると考えている。 1930年代の世界恐慌で、フランクリン・ルーズベルト大統領が打ち出した公共事業に投資を行い、デフレから脱却しようとしたニューディール政策は、国内の反対派により十分な投資ができず、失業問題を解決できなかった。100年に一度ともいわれる恐慌を迎えた今、これから新政権の政策にどれだけの人を賛同させ、経済の回復へとつなげられるか、オバマ氏の力量が試される。(2008/11/19) (参考文献)「オバマ氏『ビッグスリー支援』」Bloombergニュース2008/11/1『FujiSankei
Business i.』<http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200811010108a.nwc>;
『バラック・オバマ 応援ポータルサイト』 <http://www.barackobama.jp/>
《2008年10月》
今月4日、脳出血を起こした東京都内の妊婦が、8つの医療機関で受け入れを拒否され、出産後に死亡した。江東区に住む出産間近の妊婦は、激しい頭痛や吐き気を訴え、同区内のかかりつけの産婦人科医院に運ばれた。その症状から医師は都立墨東病院(墨田区)へ受け入れを要請したが、同院は「当直医が一人しかいないので対応できない」と断った。その後も、7つの病院で「空きベッドがない」などの理由で受け入れを断られた。約一時間後に再び要請され、最終的に対応した墨東病院は帝王切開で出産、その後脳出血の手術を行った。赤ちゃんは無事だったが妊婦は3日後に死亡した。 墨東病院は緊急対応が必要な妊婦を受け入れる「総合周産期母子センター」として、1999年6月に都から指定を受けていた。都は同センターに対して、「産科医を24時間体制で2人以上確保することが望ましい」との基準を設けている。しかし、同病院では産婦人科の常勤医が慢性的に不足し、7月以降は土日、祝日の当直が1人体制であった。なお、妊婦が搬送された日は、土曜日で当直医は5年目の研修医1人だけであった。都は、「搬送までの時間と死亡の因果関係は不明だが、もう少し早ければ、命が助かった可能性も否定できない」として、産科の医療体制のもろさを認めている。 医師不足には早急な対策が必要である。そもそも、医師不足の大きな要因は、2004年度から始まった「新医師臨床制度」である。勤務する診療科や地域を自由に選択できるようになり、研修先を出身大学ではなく、都市部の有力病院を選ぶ新人医師が増え、地方の大学病院などが深刻な人手不足に陥っている。解決のためには、自由選択をなくし地域・診療科ごとに定員を定め、計画的に医師配置をできるよう改める必要があるだろう。特に医師不足が深刻な産科や小児科などの分野は、激務を余儀なくされており、医師を増やし過重労働の緩和が急務である。また、勤務医は開業医と比べ給与が低いので激務に見合った報酬改定も必要だろう。 政府は医療の効率化を進め、介護との連携を強化することで入院短縮をはかる改革案を掲げている。しかし、必要な人材をどう確保するかという根本的な問題を棚上げにしているようでは、この先も妊婦が安心して出産できる環境を確保できる見通しは立たない。政府は、さまざまの論議を呼ぶであろう財源の問題も含めて、医師数の確保に向けた具体的な対策に責任を持って取り組まなければならない。(2008/11/2) (参考資料)『読売新聞』(2008年10月16日、22日、24日)
《2008年9月》
大恐慌以来ともいわれる金融危機は、大統領選挙の行方を大きく左右しそうである。 2000年代の前半、アメリカは5年間で住宅の平均価格が50%以上も上昇するほどの住宅バブルにわいた。そして、本来は信用度が低く住宅ローンを組めないはずの人に対しても、将来の住宅価格の上昇を見越して高金利で融資するサブプライムローンが数多く組まれるようになった。しかし、住宅価格の上昇率は2006年に鈍化、2007年にはローン返済の延滞率が上昇、住宅バブルははじけた。サブプライムローン関連の金融商品を抱えていた金融関連企業の多くが深刻な打撃を受けた。 今年3月、大手投資銀行・証券会社のベアー・スターンズがJPモルガン・チェースに身売り、7月には連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の経営が行き詰まり、9月7日、政府の管理下に置かれることが発表された。しかし、政府が支援に乗り出すも、15日には株式市場が急落し、リーマン・ブラザーズが経営破綻、メリルリンチがバンク・オブ・アメリカに身売り、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が深刻な経営危機に陥った。24日、ブッシュ大統領は、アメリカが深刻な金融危機にあるとし、7000億ドル(約75兆円)の金融安定化策を支持するよう訴えた。 共和党大統領候補のマケインは、ブッシュ政権の金融安定化策を支援するため選挙キャンペーンを一時中断し、26日に予定されているオバマ候補とのTV討論会を延期することを呼びかけた。重要問題に対して超党派の合意を働きかけるのは、これまでにもマケインがしばしばとってきた手法である。しかし、今回の呼びかけは、マケインが共和党政権の失政で及び腰になっているという印象を与えただけで、オバマは呼びかけに応じなかった。マケインは外交問題に強く経済問題に弱いと見られており、本来であれば外交問題を主な議題とする26日のTV討論会はマケインに有利に作用するはずであった。しかし、今回のTV討論会では、自然と金融問題に注目が集まり、オバマは「マケイン氏によって支えられたブッシュ政権の8年間の経済政策の失政への審判だ」とまくしたてた。 討論会後、CBSが態度未定の有権者を対象に実施した世論調査では、オバマの勝利という答えが39%、マケイン勝利が24%、引き分け37%であった。CNNの同様の調査では、オバマ勝利が51%、マケイン勝利が38%であった。ここへ来てオバマが大きくリードを広げた形である。(2008/10/25) (参考資料)ロイター9月25日・26日、産経新聞9月27日。
共和党全国大会が1日からミネソタ州セントポールで開かれた。大会3日目、代議員による大統領候補の投票が行われ、ジョン・マケイン上院議員(72)が正式に指名。マケインは勝利すれば1期目の大統領として史上最高齢となる。マケインは、高齢である点と宗教保守からの支持が弱いことが弱点と見られてきたが、副大統領候補には、それらの点をカバーできる人物としてアラスカ州のサラ・ペイリン知事が指名された。共和党で初の女性副大統領候補となったペイリンには、民主党でオバマと指名争いをしたヒラリー・クリントンの支持者の票が流れることも期待されている。しかし、マケインが高齢であるだけに、副大統領には、万一の場合に大統領職を務める資質が求められるが、ペイリンに関してはその点が疑問視されている。 4日に行われたマケインの指名受諾演説の骨子は次のとおり。 一、イラクに対する正しい戦略のために戦い、米軍増派戦略を支持してきた。国が戦争に負けるくらいなら大統領選に負ける方がましだ。
また、1日に採択された共和党綱領の骨子は次のとおり。 (外交)
《2008年8月》
民主党全国大会が25日からコロラド州デンバーで開かれた。大会3日目の27日、代議員による大統領候補の投票が行われ、バラク・オバマ上院議員(47)が正式に指名。二大政党で初めて黒人大統領候補が誕生した。これまでの選挙戦で、オバマは若さゆえの経験不足と外交に弱いという批判を受けてきたが、副大統領候補には、それらの点をカバーできる人物として上院外交委員長の経歴を持つジョゼフ・バイデン上院議員(65)が指名された。 28日に行われたオバマの指名受諾演説の骨子は次のとおり。 一、個々人が夢を追求できる「米国の約束」を再生
また、「アメリカの約束を新たに(Renewing America's Promise)」と題され、25日に採択された民主党綱領の骨子は次のとおり。 (外交)
8日、世界が北京オリンピックの開会式に注目する中で、グルジア軍が南オセチアの分離勢力に攻撃を仕掛けたことを受けて、ロシアは同地のロシア人の保護を理由に南オセチアに進軍した。ロシアは、欧米諸国からの批判に動じることなく人道的理由を掲げて作戦を継続、13日にフランスのサルコジ大統領の調停でグルジアとの和平に応じたものの、26日には一方的に南オセチアの独立を承認した。これにより、29日、グルジアはロシアとの国交を断絶。この問題は、米ロ関係に深刻な歪みを生じさせることとなり、一部には「新冷戦」と呼ぶものさえ現れている。 グルジアは、旧ソ連の指導者スターリンの故郷として知られるが、ソ連崩壊後は脱ロシア、親欧米路線をとってきた。今年1月に再選を果たしたサーカシヴィリ大統領は、NATOやEUへの加盟を推進している。ロシアは、こうしたグルジア政府の動きに警戒心を強めてきた。アメリカ政府は、ロシアとグルジアの双方に自重を求めてきたと主張しているが、実際にはこれまで米軍がグルジア軍の訓練や装備を支援してきたことが知られている。 グルジアは日本人には馴染みの薄い国で、現在同国には日本の大使館さえ置かれていないけれども、地政学的には重要な国とみられる。カスピ海の西側、黒海東岸に位置するグルジアは、カスピ海の石油や天然ガスをロシアを通さずにヨーロッパに輸送するパイプラインのルートに位置し、ロシアと欧米の権益が深くかかわっているからである。 オセット人が多く居住するオセチアは、北をロシア、南をグルジアに支配されてきた地域で、オセット人の民族意識と両国の野心が交錯している。ソ連解体とグルジア独立のあおりで自治権を消滅させられた南オセチアは、1990年代前半、独立を求める動きを強め、グルジアと紛争状態となった。グルジアは南オセチアの独立を認めず、同国内に南オセチア自治州を再設立するが、以後、南オセチアは独自の憲法を制定して独立国家としての体裁を整え、グルジアからの分離と最終的には北オセチア共和国のあるロシア連邦への加盟を目指している。 今回の南オセチア紛争の原因について、ロシア側は、グルジアが南オセチアの支配権を再確立するために攻撃を仕掛けたことを非難し、ロシアの介入はコソヴォ紛争におけるNATOの介入と同様に人道的なものであると主張した。一方、グルジア側は、ロシアが南オセチアの分離勢力をたきつけて故意に紛争を誘発したと主張している。 アメリカは、ロシアの軍事侵攻を過剰反応として非難し、グルジアの領土保全を求めている。ロシアのプーチン首相は、ロシアが裏で糸を引いて南オセチア紛争を誘発したという見方に対して、むしろグルジアをけしかけたのはアメリカであると示唆し、ブッシュ政権が2008年大統領選挙で共和党候補に勝たせるために国際紛争を引き起こそうとしたとの考えをにおわせて物議を醸した。ただ、現実問題として、アメリカといえどもロシアの喉元で大胆な軍事介入をすることはできないし、ブッシュ共和党政権はむしろロシアに不意を突かれ、後手に回ったという批判を受けている。(2008/10/21) (参考資料)「傷ついたプライドのせいで発火、南オセチアの偶発戦争――フィナンシャル・タイムズ」『翻訳gooニュース』(8月11日);「米国が育てたグルジア軍とロシアの闘い」『WIRED
VISION』(8月11日);「【図解】依然続くロシア・グルジア間の緊張」『AFPBB
News』8月19日;「暴走する皇帝プーチン『米政権の策略』」『共同通信』8月30日など。
《2008年7月》
去年、世界の主要な穀物生産量は21億トンと過去最高を記録した。それにもかかわらず、国際的な食糧価格が高騰している。日本のように自給率が低く、食糧の多くを輸入に頼る国にとって、国際的な食糧事情の悪化は深刻な問題であるが、収入のほとんどを食費に充てている貧困国の人々が受ける打撃は、さらに深刻である。では、なぜ食糧価格が高騰するのだろうか。その主な原因とされるのが、アメリカ、ブラジルが推進しているバイオ燃料である。 バイオ燃料とは、トウモロコシ、サトウキビに代表されるエネルギー植物からつくられるもので、石油に代わる燃料として注目されている。しかし、問題は、エネルギー植物を増産しようとするあまりに、これまでは他の食糧を生産していた農地を、エネルギー植物用農地に転換してしまうことである。トウモロコシやサトウキビをいくら大量に栽培しても、そのほとんどをエタノールにしてしまうのでは、食糧価格は安くならない。それどころか、結果的には、減産した他の食糧の価格も含めて、食糧価格を全般的につり上げてしまうのである。 環境問題、石油依存からの脱却といった問題解決の糸口として始められたバイオ燃料政策であるが、その新しい産業から利益を得ようとする国や企業が躍起になる一方で、世界の貧しい人達が苦しめられている現実がある。アフリカでは、外国の企業が次々と広大な農地を買い漁り、エネルギー植物を作らせている。その一方で、飢えに苦しむ国民の食糧事情はむしろ悪化のする傾向にあるのである。
神奈川県は4月15日、県内の公共施設における禁煙条例素案を発表した。「健康増進のため」「県民(非喫煙者)を受動喫煙から守るため」という目的で、今年秋の成立、来年4月の実施を目指している。今回の素案では、利用者が不特定多数とは言いがたい事務所や更衣室、休憩室などは、条例の対象外とされた。 県は去る2月12日、知事の松沢成文氏を中心として、業界団体や個別の事業者など約60名を施設側から招いて意見交換会を開いた。また、3月22日にタバコ業界と、6月14日には横浜市と川崎市のホテル事業15件との意見交換を実施した。上記のどの会合でも、施設や業者側の反応は条例に対して否定的であり、特に「喫茶店にはタバコを吸いに来ている人も多く……補償が必要なのでは」「(ホテルの)宴会場での禁煙は難しい」という意見が多かった。来客数の減少による売り上げの低迷が心配であることがうかがえる。そのため、松沢知事は同条例に対して当初よりもやや軟化傾向を見せ、6月の県議会で示すはずの条例の骨子案を9月に延期した。また、当初は「全面禁煙」を掲げていたが、「段階的な導入や完全分煙」も考慮に入れているという発言もあった。 一方、県が集計した条例に対するパブリックコメントの中には、「(条例の)早期発効を望む」「禁煙の居酒屋ができたらぜひ通う」「(レストランなどにおいて)未成年者を連れて行く場合、煙の行方が気になる」などの意見も見られた。おそらく、サービス業に関係のない一般の非喫煙者によるものであろう。このことから、県内には禁煙条例の施行を待ちわびている非喫煙者も多くいることが推察される。非喫煙者の受ける副流煙による害は医学的にも証明されており、健康面を考えた場合に条例の早急な施行が望ましいのは確かである。神奈川県の禁煙条例をめぐる議論は、賛否両論の問題ではあるが、喫煙のマナーがどうあるべきかを考えるよいきっかけとなるにちがいない。(2008/7/18) (参考資料)『日本経済新聞』2008/2/13, 4/16, 6/26。「神奈川県公共的施設における禁煙条例(仮称)にかかる県民意見の概要」
原油価格の高騰が止まらない。6月には1バレル140ドル(約15000円)に接近し、いまやガソリン価格も1リットル180円に到達しようとしている。石油高騰には、いくつかの要因がかかわっている。まず、2007年1月ごろにOPEC諸国が石油を日量50万バレルに減産し、原油の供給が減った。次に、中国やインド等BRICs諸国における自動車の普及や工業の発展により原油の需要が急増した。さらに、アメリカのサブプライムローン問題が重なった。低所得者向けの住宅ローンの破綻をきっかけに金融・証券市場が大混乱し、暴落する株式市場から逃避した投資資金が商品相場に流入して石油価格を引き上げたのである。 今後の見通しとしては、次の3つのシナリオが考えられる。第1に、1バレル150ドルシナリオ。投資資金の流入がこのまま続けば石油価格はこのまま高騰を続け、1バレル200ドルまで高騰する可能性もある。また、ロシア・ベネズエラ等の原産国が生産抑制を続ければ、この推測が当たる可能性がある。第2に、1バレル100ドルシナリオ。オリンピック後に中国の経済が減速し、原油の供給が減り石油の価格も落ち着くという推測である。このシナリオが一番多く予測されている。第3に、1バレル70ドルシナリオ。このまま経済の停滞が続き、石油の需要が減り続ければ、石油の価格は一気に下落する。 結局、石油価格の実際は1バレル80ドル程度なのである。しかし、欧米諸国のマネーゲームによって石油価格が高騰してしまったのである。小麦やとうもろこしからバイオエタノールが作れるようになり、今までオレンジや穀物を栽培していた農家のほとんどが小麦等のバイオエタノールの原料生産に切り替えてしまった。その結果、バイオエタノールの原料として使われる小麦の値段のみならず、小麦の生産に切り替えてしまい生産が減ってしまったほかの穀物の値段も同時に上がってしまった。今まで値段が安く安定していた小麦や穀物を食べて暮らしていた途上国の人々は悲鳴を上げている。
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