国際政治・アメリカ研究

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目 次

《2006年6月》 
イラク・サマワの陸上自衛隊撤退(澁谷創)
W杯にみるアメリカサッカー(岩崎康浩)
アメリカとイラクの連合軍によるザルカウィ容疑者殺害について(杉山沙貴)
米兵による横須賀女性殺害事件と日米地位協定(渡邉恵未)

《2006年5月》 
米国産牛肉の輸入再開(本田靖篤)
在日米軍グアム移転費問題(豊田剛)

《2006年1月》
米最高裁オコナー判事の後任に保守派のアリートが就任



《2006年6月》 

イラク・サマワの陸上自衛隊撤退(澁谷創)

 イラクのマリキ首相は6月19日、サマワ周辺の治安維持の権限が7月に多国籍軍からイラク側に移譲されると発表した。これに伴い、20日午後、小泉首相はサマワに派遣していた陸上自衛隊の撤収を表明した。ただし、陸上自衛隊の撤収後も、航空自衛隊は多国籍軍の輸送支援を行う。この決定に対し、陸上自衛隊の撤退は遅すぎた、行く必要がなかったという声もあがっている。また、記者会見で小泉首相は、陸上自衛隊の撤収の決定は首相退陣の時期を意識したものではないと述べたが、「小泉首相の最後の花道に利用されているように見える」と抗議団体から批判されている。

 支援活動中の自衛隊員には攻撃による被害はなかったが、今後イラクによる治安維持には不安が残る。また、サマワでは劣化ウラン弾による汚染が指摘されており、帰国後の自衛隊員の健康問題も心配されている。そこで、自衛隊の撤退を前に改めて問いたい。そもそも、陸上自衛隊の派遣はイラクの復興支援が目的であったが、その内容とは具体的にどのようなものであったのか。復興支援は民間の支援団体では出来ないような特別な仕事であったのか。また、約2年半に及ぶ支援の成果はどのようなものであったのか。陸上自衛隊の復興支援は、どの程度サマワの人たちの役に立ったといえるのか。もし政府の説明が十分に説得的でないならば、今回のような自衛隊の派遣が続くことへの国民の不安は消えないであろう。(2006/7/11)

(参考文献)毎日新聞6月21日、ロイター通信6月20日、共同通信6月20日、23日、26日。
 


W杯にみるアメリカサッカー(岩崎康浩)

 現在、ワールドカップ・サッカーがドイツで開催されている。古くからサッカーが盛んなヨーロッパや南米では、強豪国が次々と予選を通過し、本大会への出場を決めた。そのような中で、一般的にはそれほどサッカーが強いというイメージのないアメリカが、本大会への出場を決めた。アメリカのスポーツといえば、野球・バスケット・アメリカンフットボールなどが思い浮かぶが、実は、アメリカは、国際サッカー連盟(FIFA)のランキングでも5位にまで上りつめており、今回でW杯5大会連続出場を果たしたのである。W杯代表メンバーの中には、前回大会に参加していた選手が10人も含まれており、上位進出への期待も大きく膨らんだ。

 6月12日、アメリカの初戦(対チェコ)が行われた。結果、前半に2点・後半に1点を奪われ、0対3の完敗で終わり、アメリカは黒星スタートとなった。17日、2戦目(対イタリア)では、前半に1点ずつ奪い合い、そのまま引き分けとなった。22日、最終戦(対ガーナ)では、前半に2点を奪われたのち1点を奪い返し、後半に前線の選手を増やして攻撃的にしたが追加点を奪えず、1対2で惜敗した。

 結局、今大会のアメリカは、1分2敗でグループリーグ(一次リーグ)敗退という結果に終わった。しかし、2戦目、古くからの強豪国であるイタリアを相手に同点という結果は、アメリカサッカーの進歩と強さを感じさせた。現在、アメリカでは、子供・女性に限れば、サッカーがナンバーワンの人気スポーツになっており、アメリカがサッカーの世界でも強豪国といわれるようになる日はそう遠くないかもしれない。(2006/6/26)

(参考資料:『Yahoo!スポーツ2006FIFワールドカップ』<http://wc2006.yahoo.co.jp/>)


アメリカとイラクの連合軍によるザルカウィ容疑者殺害について(杉山沙貴)

 2006年6月8日、イラク政府は、イラク聖戦アルカイダの指導者ザルカウィ容疑者を殺害したと発表した。現地7日の夕方、イラクとアメリカの連合軍は、同容疑者が潜んでいるとみられる民家を狙って空爆を開始し、空爆後の捜索で男女数名の遺体を発見した。そのうちの一人の指紋を照合し、DNA鑑定をした結果、ザルカウィ容疑者と断定した。ブッシュ政権は、イラク政策に対する国民の不満が高まる中で、同容疑者の殺害を「テロとの戦い」における重要な成果としてアピールしている。

 ザルカウィ容疑者とは、2003年のイラク戦争が開戦されてから、数多くの自爆テロや、駐留している軍隊への攻撃に関与し、シーア派とスンニ派の宗教的対立をあおるなどした人物とされている。また、2004年には香田証生さん殺害に関わっており、2005年のヨルダン・アンマンでのホテル同時爆破テロを主導していたことも明らかになっている。

 イラク聖戦アルカイダが強力な指導者を失ったのは事実である。しかし、その後もイラクでは、治安の劇的な改善は見られず、平穏とは程遠い状況が続いている。同容疑者が死亡したとしても、米軍の駐留やイラクの失業率に対する不満が解消されること、そしてアメリカ型の自由や民主主義を押し付けるのではなくイラクの実情にあった政府や体制がつくられることなしには、治安は改善しないであろう。それらの条件が満たされる見通しは依然として厳しい。ブッシュ大統領は、今回のザルカイウィ容疑者の殺害を受けて、できるかぎり早い時期にイラクから軍を撤退させたいとしながらも、米軍の撤退はイラクの治安が回復されてからと発言している。(2006/6/14)

(参考文献)毎日新聞6月8日・9日、ロイター通信6月9日、時事通信6月10日、朝日新聞6月10日。
 


米兵による横須賀女性殺害事件と日米地位協定(渡邉恵未)

 今年1月、元米海軍横須賀基地の一等航空兵ウィリアム・リース被告(22)が、市内の歩道で通りかかったパート社員佐藤好重さん(当時56)を殺害し、現金を強奪するという事件が起こった。酒を飲んで帰宅途中のリース被告が、佐藤さんに道を尋ねるふりをしてバックから現金1万5000円を奪い、抵抗されたため暴行を加えて殺害した。県警は現場付近の防犯ビデオの映像から米兵の可能性があるとみて在日米軍に照会し、軍の調査によってリース被告が殺害を認めたため、逮捕に至った。横浜地裁は6月2日、リース被告に対して求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

 1960年の新日米安保条約に基づいてつくられた在日米軍の地位に関する協定(日米地位協定)は米側に有利な内容となっているが、協定の運用改善によって日本の権限が増している部分もある。1995年の運用改善では「凶悪犯罪」に限り米側に起訴以前の身柄引き渡しが可能となった。2004年には日本側の取り調べに米軍司令部の立ち会いが可能となっており、今回の事件は04年の改善が適用された初のケースとなった。

 外務省によると、米軍による犯罪予防のための夜間巡回や、ゲートでの飲酒チェックを行っているとの報告がある。しかし、今回の事件を見るかぎり、その効果には疑問を抱かざるを得ない。米軍は協定の運用改善に対応するだけではなく、犯罪を予防するための対策にもいっそうの努力をしていくべきである。(2006/6/9)

(参考資料)『朝日新聞』6月2日、『nikkansports.com』1月5日、『外務省ホームページ』ほか。
 

《2006年5月》 

米国産牛肉の輸入再開(本田靖篤)

 今月17〜19日に開かれた日米両政府の専門家会合で、6月に米国産牛肉の輸入を再開する方針が固まった。政府は今後、輸入再開へ向けた安全対策について全国で消費者との意見交換会を開き、そこで国民の理解を得られたことが確認できれば、輸入再開を正式に決定する。手続きが順調に進めば、7月には米国産牛肉が日本の店頭に並ぶ予定である。

 果たしてアメリカの牛肉処理施設の態勢が万全なのか、という疑問を拭いきれない中での輸入再開であるが、これには6月29日に予定されている日米首脳会談が大きくかかわっている。日米間の懸案だった在日米軍再編問題が決着した今、首脳会談の前に米国産牛肉の輸入を再開すれば日米間の大きな問題がまた1つ解決し、首脳会談は良好な日米関係を改めて内外に示す機会となるからである。

 米国産牛肉の輸入再開が正式に決定されれば、販売休止中の吉野家の牛丼が早ければ8月にも復活する予定である。松屋フーズも米国産牛肉の使用を検討中である。一方、すき家のゼンショーは「わが社の基準で安全性が確認されない限り米国産には戻せない」と慎重な態度を示している。たしかに、米国産牛肉の安さは魅力である。しかし、今輸入を再開しても以前ほど多くの消費量は望めないのではないか。日本の消費者が望んできた全頭検査が行われない以上、政府レヴェルでの合意が成立しても、消費者の不安は払拭されないはずだからである。(2006/5/24)

(参考文献:朝日新聞5月21日、毎日新聞5月21日)
 


在日米軍グアム移転費問題(豊田剛)

  5月1日、在日米軍再編の一環として在沖縄海兵隊をグアムに移転する計画に、日本側が約6700億円の費用を負担することが最終合意された。沖縄の基地負担の軽減が目的とはいえ、外国の基地費用に日本の税金を投じることには疑問もある。そのうえ、その移転計画が、沖縄にとって大きな負担の軽減につながるとは限らない。

 まず、沖縄からグアムに移るのは在沖縄海兵隊約1万5千人のうち司令部要員が中心で約8千人である。その家族約9千人も含めると1万7千人が沖縄からグアムに移ることになる。しかし、実戦部隊はほぼそのまま沖縄に残っており、軍用ヘリコプターなどによる騒音や事故の危険の解消にはあまり役立ちそうにない。また、米軍による沖縄での犯罪は「20歳前後の若い実戦部隊の海兵隊員が多い」と元那覇市議の高里鈴代さんは言う。返還を進める予定の基地は、県内の米軍専用施設の1割の広さにも満たない。

 在日米軍再編全体では、日本側の負担は3兆円にものぼる。3兆円という金額は日本国民の増税につながるとも言われており、沖縄県民だけの問題ではない。1日に日米が最終合意したことにより、3年半続いた再編協議はこれから実行段階へと移る。日米間の防衛協力は深まるが、基地をめぐるさまざまの課題は残されたままである。(2006/05/20)
 

《2006年1月》

米最高裁オコナー判事の後任に保守派のアリートが就任

 1月31日、米上院は、サミュエル・アリートの最高裁判事への就任を58対42の賛成多数で承認した。アリート判事は、昨年7月に辞意を表明したオコナー判事の後任として、10月にブッシュ大統領に指名されていた。これまで米最高裁は保守派とリベラル派の勢力が拮抗していたが、中道派のオコナーにかわり保守派のアリートが就任したことで、最高裁全体の勢力は保守派寄りに傾くと見られている。特に人工中絶をめぐる問題などへの影響が注目される。現職の最高裁判事は以下のとおり。(2006/05/26)

                                 生年・就任の年           政治的立場
  John Paul Stevens      1920年生まれ、1975年就任     リベラル派
  Antonin Scalia            1936年生まれ、1986年就任     保守派
  Anthony Kennedy        1936年生まれ、1988年就任     中道派
  David H. Souter          1939年生まれ、1990年就任     リベラル派
  Clarence Thomas        1948年生まれ、1991年就任     保守派
  Ruth Bader Ginsburg    1933年生まれ、1993年就任     リベラル派
  Stephen G. Breyer       1938年生まれ、1994年就任     リベラル派
  John G. Roberts, Jr.    1955年生まれ、2005年就任     保守派
  Samuel A. Alito, Jr.     1950年生まれ、2006年就任     保守派

(参考資料)産経新聞2005年7月2日、米最高裁ホームページほか
 


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