THE AMERICAN MUSIC: Blues, Jazz, Rock
 


WELCOME


 追悼――J・J・ケイルの死去

  アメリカが好きでないひとでも、アメリカン・ミュージックを愛することはできる。自由と差別、繁栄と貧困・・・・。  
  アメリカの光と影がうみだす素晴らしい音がそこにある。                                      
  

 2013年7月26 日、アメリカ人のギタリスト、シンガー・ソング・ライターのJ・J・ケイルが心臓発作のため死去した。一般的な知名度は高くないものの、プロの間で一目置 かれるMusician's Musicianであり、エリック・クラプトンをはじめ、多くのアーティストに影響を与えた伝説的な存在である。晩年、エリック・クラプトンと の共作『ザ・ロード・トゥ・エスコンディード』でグラミー賞(2006年最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム)を受 賞して日の目を見たが、実はそれはエリック・クラプトンにとって名誉なことだったのではないか。J・J・ケイルはぼ そぼそと歌い、ギターの旋律はどちらかといえば平坦で抑揚がない。しかし、よく聞くと唯一無二のスタイルとして完成されており、いぶし銀のような魅力に溢 れている。ニール・ヤングは「ジミ・ヘンドリックスとJ・J・ケイルこそ最高のエレキギターの演奏者だ」と述べたそうだが、私の評価もそれに近い。

  突然の訃報に触れ、彼がすでに74歳という高齢だったことに驚いた。もちろん、今時の70歳代の中にはまだまだ元気な方が多いが、そういう意味ではなく、 60年代ロックの草分けであるビートルズやローリングストーンズのメンバーよりも年齢が上だからである。J・J・ケイルは50年代にもシングル曲をレコー ディングしたことがあるようだが、世間に認められるようになったのは、71年のシングル「Crazy Mama」、72年の初アルバム『Naturally』からである。そのときすでに彼は32、33歳に達していた。『Naturally』は若い頃から私 が最も好きなアルバムの一つであり、その内容はすでに円熟の域に達していた。 

 1992 年にフジテレビが深夜に『アメリカン・ギターズ』という 番組を何回か放送したが、「フェンダー」の特集を見ていると、J・J・ケイルがソファーに座って名器ストラトキャスターの解説をはじめ、おもむろに 「After Midnight」を弾き語り始めた。それは実に渋い、素晴らしい演奏だった。ぜ ひ一度生で演奏を聴いてみたい本物のミュージシャンであった。(2013/9/5)

 

BACK

 
 
   
 
西岡達裕のページHOME  AMERICAN MUSIC HOME
 JAZZ コーナー  ROCK コーナー