THE AMERICAN MUSIC: Blues, Jazz, Rock
 


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 不朽の名盤――ジャズ編

  アメリカが好きでないひとでも、アメリカン・ミュージックを愛することはできる。自由と差別、繁栄と貧困・・・・。
  アメリカの光と影がうみだす素晴らしい音がそこにある。(このページでは、どこぞの駆け出し評論家のように、
  思い入れたっぷりの文体で、名盤を紹介します。)
 

  (2) Sonny Rollins, Saxophone Colossus             

 
    テナー・サックスの巨人ソニー・ロリンズが1956年に残した決定的名盤『サキソフォン・コロッサス』。
   ファンの間では「サキコロ」の愛称で親しまれているアルバムである。

   ソニー・ロリンズのサックスの魅力を一言でいえば、「豪放」である。太く、堂々とした音、爽快で、のびやか
  なメロディ・ライン。男っぽく、ストレートで、わかりやすいジャズである。

   以前、私は、彼のサウンドの親しみやすさに疑問を感じたこともあったが、それは若気のいたりであった。
  豪快なサウンドとは裏腹に、彼は、繊細な神経の持ち主であると言われる。その証拠に、彼のキャリアは決
  して平坦なものではなく、何度も引退と復活を繰り返してきた。最初の引退劇は54年。麻薬中毒から更生
  するため施設に入っていた。クリフォード・ブラウンとマックス・ローチのバンドに加わり再起を果たし、その後
  ローチをドラムに従えて制作したのが56年録音の本作である。ロリンズはこの翌年にも『ウェイ・アウト・サウ
  ス』『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』という歴史的名盤を残している。

   ロリンズは、あの野太い音を出す秘訣は人一倍の練習しかないと述べている。「サキコロ」には、苦悩や
  鍛錬という言葉が予想させる影は微塵も見られないが、そのサウンドは、たしかに壁を一つ乗り越えた者
  のみが生み出すことのできる超越的な世界であった。

   ともあれ、ロリンズの名盤がほかの巨人たちの名盤と最も異なる点は、肩の力を入れずに誰でも気楽に
  楽しめる点だ。最初の曲「セント・トーマス」のイントロを聴いて気分がよくなったら自分も調子がよい証拠。
  そんな一枚である。
 

 
   

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