THE AMERICAN MUSIC: Blues, Jazz, Rock
 


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 不朽の名盤――ブルーズ編 

  アメリカが好きでないひとでも、アメリカン・ミュージックを愛することはできる。自由と差別、繁栄と貧困・・・・。 
  アメリカの光と影がうみだす素晴らしい音がそこにある。(このページでは、どこぞの駆け出し評論家のように、 
  思い入れたっぷりの文体で、名盤を紹介します。) 
  

  (1) Robert Johnson, The King of Delta Blues Singers (Vol.1 & 2, アナログ盤)       

   いまやブルーズ・ファンならずとも知っている不世出の天才。ロック・ミュージックの源流を遡れば、1930 
   年代南部ミシシッピ・デルタの黒人ミュージシャン、ロバート・ジョンソンに突き当たらざるをない。エリック・ 
   クラプトンやローリング・ストーンズなど、ロック創世記のミュージシャンたちが好んで彼の曲をカヴァーした 
   ことは有名である。最近では、レッド・ホット・チリペッパーズなども彼の曲をカヴァーしている。 

    私が彼のレコードと出会ったのは、18歳の頃、お茶の水の中古レコード屋をぶらついているときだった。
   当時はまだ、第1回ミラー・ブルーズ・カーニバルも開催されておらず、私の周りには彼を知るものなど
   一人もいなかった。それがいまやブルーズ・ファンでもない若者たちが彼のことを「ロバジョン」と呼ぶほど
   の人気ぶりである。彼の曲名をタイトルとした 映画が放映され、彼の足跡をたどるビデオが発売され、全
   レパートリーの楽譜がつくられ、伝記が翻訳されている。このような現象は、彼の写真の発見や、別テイク
   を含む彼の録音のCD化、映画「クロスロード」 のヒット、ワールド・ミュージック、リアル・ミュージックのブ
   ームなど、さまざまの原因によるものであろう。 

    彼の人生は数奇な運命をたどり、多くの謎が多くの伝説を生みだしている。彼は、多くの新しい和音を 
   独自につくり出し、「悪魔に魂を売った」見返りといわれる優れたギターテクニックで、一人オーケストラの 
   ようなサウンドをつくり出した。キース・リチャーズは、生ギターによる彼の弾き語りを「まるでバッハのよう 
   だ」と驚嘆している。 

    しかし、ブルーズ・ファンは、彼を「伝説」や「ルーツ」として語ることを誇りに思うと同時に嫌悪するもので 
   もある。あえていえば、西洋的な価値観でいうところの「音楽性」を基準にした史的な評価などどうでもよい。 
   圧倒的な存在感を持つ彼の音楽はいまもなお、いや永遠に生き続けるのである。レコードの針を置いたその 
   瞬間から聴き手の心臓をわしづかみする圧倒的な存在感は、過去も未来も超越した音楽の真実なのだ。 
 
 

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