国際政治・アメリカ研究


 


書評 渡辺靖著『白人ナショナリズム―アメリカを揺るがす「文化的反動」』
(中央公論社、2020 年)

西岡 達裕

(桜美林大学研究紀要『社会科学研究』第1号、2021年3月)


全文公開中=桜美 林大学学術機関リポジトリのリンク先<http://id.nii.ac.jp/1598/00002205/>

キーワード:白人至上主義、オルトライト、人種差別、
      アメリカ第一主義、ペイリオコン、トライバリズム

 本書は、著者の前著『リバタリアニズム』に続いて、現地を取材した記録をもとに、米
国の極端な思想運動の実態に迫る意欲作である。本書の狙いは「白人ナショナリストの声
に耳を傾けつつ、彼らの論理と力学をより内在的かつ多面的に考察」(p.35)することで
ある。白人ナショナリストやペイリオコン(paleoconservatism)が支持し共鳴するトラン
プ政権のもとで、従来のグローバル化路線が米国第一主義に取って代わられたことによ
り、また、欧州諸国においても同様の反動現象が起きていることから、白人ナショナリズ
ム(white nationalism)は、国際政治や外交の分野からも興味を引くテーマとなっている。

 白人ナショナリストの現状としては、「2015 年前後から若い世代を中心に、『オルトラ
イト』と称する諸々の団体や個人の緩やかなネットワークが生まれた」(p.94)と指摘さ
れる。ただ、著者は特定の団体について「明確な線引きは難しい」(p.102)とも述べてお
り、評者としては、本論に入る前にせめてテーマである「白人ナショナリズム」について
の定義を示すか、分類の基準を明示して欲しかったと思う。テーマの定義は問題の本質に
かかわるので、本書の内容を要約した後で改めて論じることにしたい。

(中略)

(付記)この書評は、初稿では内容の紹介が主で若干の感想を交えたものであったが、
査読の審査結果を受けて訂正した。

 


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