「オバマ大統領の広島訪問――原爆投下をめぐる日米の世論(補説)」
西岡 達裕
(桜美林大学大学院国際学研究科『国際学研究』第7号、2017年3月)
全文公開中=桜美
林大学学術機関リポジトリのリンク先<http://id.nii.ac.jp/1598/00001672/>
"President Obama's Visit to Hiroshima: Japan-U. S. Relations and Public Opinion,"
NISHIOKA, Tatsuhiro
Graduate School of International Studies,
J. F. Oberlin University,
International Studies, No. 7 (March 2017)
キーワード:オバマ、広島、原爆投下、世論、日米関係、核兵器のない世界
はじめに
2016年5月27日、現職のアメリカ大統領として初めてバラク・
オバマが被爆地広島を訪れ、原爆死没者を慰霊するとともに「核兵
器のない世界」へ向けたメッセージを送った。戦後71年目によう
やく実現されたその訪問は、日米関係史における一つの節目を飾る
出来事であり、日本の世論はその訪問を概ね支持した。
それまで、原爆投下の正当性や謝罪をめぐる日米の意見の隔たり
が大統領の訪問の実現を阻む障害になると考えられてきたが、結果
的に見れば、日米両国で目立った反発や混乱は起きなかった。ただ、
その訪問は実現されること自体に意味があると見られるような出来
事であり、象徴的な意味合いが大きいとしても、現実的にはどのよう
な意義があったのか。広島でのオバマの演説の中には、原爆投下の
是非についても「核兵器のない世界」の実現についても何ら具体的
な内容は含まれていない。その意味で、その訪問の意義は判断が難
しい。将来の進展如何では「核兵器のない世界」への一歩とも、内
実のない政治ショーとも評されうるのである。
以下では、オバマ大統領の広島訪問について、日米両国が謝罪の
問題を乗り越えて訪問の実現に至った経緯、日米の世論の反応、そ
して「核兵器のない世界」との兼ね合いにおける国際政治上の含蓄
を考察する。
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