国際政治・アメリカ研究


 

「オバマ政権の外交と『核兵器のない世界』――その起源と含意」

西岡 達裕

(『桜美林論考 法・政治・社会』第2号、2011年3月)

全文公開中=桜美 林大学学術機関リポジトリのリンク先<http://id.nii.ac.jp/1598/00000772/>



"A World without Nuclear Weapons and Obama's Diplomacy:
It's Origins and Implications,"


NISHIOKA, Tatsuhiro

Division of Law and Political Science,
J. F. Oberlin University,

The Journal of J. F. Oberlin University, Law, Politics and Sociology, No. 2 (March 2011)


 はじめに

 2009年4月、アメリカ合衆国のバラク・オバマ大統領がプラハで
「核兵器のない世界」の平和と安全を追求する決意を表明した演説
は、世界的な反響を呼び、オバマはその年のノーベル平和賞を受賞
した。しかし、その一方で、決意表明のみでいまだ実績のないオバ
マにノーベル賞を贈ることについて、疑問の声があがったこともま
た事実である。この論文では、プラハ演説で示された「核兵器のな
い世界」とその「道筋」について説明した上で、その構想の起源、
戦略的な根拠、外交上の含意を考察する。

 核兵器の歴史において、冷戦期が第一の時代であったならば、冷
戦後の現在は第二の時代に突入したといわれる。ソヴェト連邦が保
有する大量の核兵器の脅威がなくなり、唯一の超大国となった現在
のアメリカにとっては、ならずもの国家とテロ組織による大量破壊
兵器の脅威が安全保障上の主な課題として認識されている。脅威の
規模は小型化したが、オバマ政権には特に核テロの発生を防止する
ための対応が遅れているという危機意識があった。オバマ大統領の
プラハ演説は、そのような国際政治状況と脅威の変化に応じて、冷
戦の終結から20年を経て発せられた核兵器問題の仕切り直しの号令
であった。

 この論文は、21世紀初頭、アメリカの「卓越」と「力の逆説」が
共に指摘されるような国際政治状況の中から「核兵器のない世界」の
構想が現れたアメリカ外交の文脈を解きほぐし、発表時におけるそ
の構想の基本的性格を浮かび上がらせようとする試みである。


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