国際政治・アメリカ研究


 


「G・W・ブッシュ政権の外交とミサイル防衛」 

西岡 達裕

(桜美林大学『国際学レヴュー』第16号、2004年 3月)

全文公開中=公開 桜美林大学学術機関リポジトリのリンク先<http://id.nii.ac.jp/1598/00001352/>


Summary

"Bush Diplomacy and Missile Defense,"

NISHIOKA, Tatsuhiro


Obirin University,

Obirin Review of International Studies, No. 16 (March 2004)

    In the Cold War era, American diplomacy was characterized
by internationalism. After September 11, 2001, Bush diplomacy is
characterized by extreme unilateralism. Why and how has American
diplomacy converted from internationalism to unilateralism? What
we are concerned about here is the process of U. S. national security
policy from the end of the Cold War to September 11. In that period,
there was a considerable controversy over Missile Defense, which
reflected the conflict between Democrats and Republicans, liberals
and conservatives, multilateralists and unilateralists. This paper attempts
to investigate the details of controversy over Missile Defense and consider
the origins and reasons of the Bush administration's unilateralism.


 はじめに

 冷戦の終結後、アメリカ合衆国は、かならずしも外交および安全
保障政策の明確な方向性を見いだすことができずに漂流してきた。
だが、いまやジョージ・ W・ブッシュ政権は、2001年9月の米中
枢同時多発テロ事件を契機として、冷戦期の外交運営とはまったく
異なる新たな方向性を見いだしたかに見える。あえて単純に図式化
すれば、それは、外交面では多国間共同主義(マルティラテラリズム)
から単独行動主義(ユニラテラリズム)への転換であり、安全保障面
では報復型の核抑止戦略からより積極的な攻撃・防御の戦略――先
制攻撃とミサイル防衛――への転換である。国際政治のあり方その
ものに大きな影響を与えた、この、あまりにも重要な転換は、なぜ、
また、いかにして行われたのであろうか。

 この問題を考えるうえで注意しなければならないのは、その転換
が実際には同時多発テロ事件という一つの契機ではなく、冷戦の終
焉と同時多発テロ事件という二つの契機を経て行われたことであり、
その間には、いわば新しい政策の潜伏期間として、約10年の中間
期が存在したことである。そして、その中間期において、最も重要
な安全保障上の争点として注目されてきたのが、ミサイル防衛であ
った。それはまるでSF映画に出てくるような、先端技術を駆使し
た兵器体系であり、多くの人びとには、雲をつかむような話である
と思われたにちがいない。しかし、その中間期における戦略論議の
焦点には、冷戦後のアメリカ外交と安全保障のあり方をめぐる意見
の対立が最もよく反映されていたと考えられるのである。

 この論文は、冷戦の終焉という第一の契機と同時多発テロ事件と
いう第二の契機の中間期を考察の対象として、ブッシュ政権のミサ
イル防衛積極推進論に至るアメリカの戦略論議の流れを整理する。
また、そのような作業を通じて、ブッシュ政権に単独行動主義と先
制攻撃戦略が現れた背景を探り、その路線がどのような基礎に立つ
ものであるのかを考察することにしたい。


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